兄妹同日優勝果たした『いい話』

柔道男子66キロ級決勝、

ジョージアのバジャ・マルグベラシビリ(下)を激しく攻める阿部一二三

(25日)日本武道館

柔道女子52キロ級決勝、

フランスのアマンディーヌ・ブシャール(下)を果敢に攻める阿部詩     (25日、日本武道館)


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緊張しがちな一二三に母が用意した「赤パンツ」

詩が本気になったのは「兄ばかりチヤホヤ、悔しくて~~~。」

 

東京五輪の柔道男子66キロ級の阿部 一二三ひふみ選手(23)(パーク24)と、

妹で女子52キロ級の 詩うた選手(21)(日体大)が

 

25日、念願の 兄妹きょうだい同日優勝を果たした。

兄は妹から刺激を受け、妹は兄を追って、

ふたりが歩んできた「 柔やわらの道」

神戸市で生まれた2人。

兄は幼稚園の時、テレビで見て「格好いい」と柔道を始めた。

最初は体の大きな小学生が怖くて泣いてばかり。

小柄で、小3の時には女子に負けた。

 

 「一番になりたい」。

父の浩二さん(51)と始めたのが、体幹や腰回りを鍛えるトレーニング。

自宅から道場までの3キロの道のりを走って通った。

 指導した「兵庫少年こだま会」の高田幸博さん(57)は、

「どんな練習も手を抜かない。誰よりもコツコツ努力していた」

と、振り返る。

 

 だが、どんなに稽古を積んでも試合になると緊張し、

極端に口数が少なくなる息子を見かね、

母の愛さん(49)が用意したのが赤のパンツ。

 

「闘志をかき立てる色だから、気持ちを高めてほしい」との思いだった。

 

 

詩選手が、 兄を追って、同じ道場に通い始めたのは5歳の時。

「友達の輪の中に入って、おしゃべりするのが楽しかった。

 

柔道には興味がないので、

練習はサボっていました」と笑う。

 

技を覚えるのは兄より早く

、教えられなくても、見よう見まねでできるようになった。

本気で取り組むようになったのは、

兄が中学2年から全国大会を連覇したから。

 

「お兄ちゃんばかり、ちやほやされるのが悔しくて。

私にもできるぞって思った」

 

 中2の全国大会は決勝で敗れた。「誰にも負けたくない」。

兄の動画を見て動きをまね、ノートに指導を受けた内容や気持ちをつづるようになった。

その1年後、全国制覇した。

 

 競い合って成長した2人は、

2018年の世界選手権で、日本選手として史上初の兄妹優勝を達成し、

東京五輪での再現を強く意識していた。

 

 だが、兄はライバルの台頭で一時、五輪が遠ざかった。

妹も勝てば代表が内定する試合に負けた

詩選手が「自分たちにしか分からないつらさがある」と漏らしたこともあった。

 

 兄妹だけが知る苦難を乗り越えて得た

二つの金メダル。

表彰式を待つ間、抱き合い、互いに「おめでとう」と言って喜んだ。

 

一二三選手は言った。

「人生で最高の一日になった」

 

 

いい話。